音楽ビジネスのプラットフォーム化したゲームメディア

 今や音楽ゲームの代名詞となった「Guitar Hero」シリーズ、それと昨年末に登場した競合の「Rock Band」、いずれも大ヒットを続けており、次々と新作や関連製品のニュースが出てきている。
 Rock Bandは、あまりの箱がデカさに、そんなのが売れるのかと疑問視する声もあったが、店に行くと一つのコーナーに山積みして売っている。Guitar Heroの時にも「でかい周辺機器の商品は売れない」と言われていたが結果的に空前の大ヒットとなった。従来の商慣習の常識にGuitar Heroが突破口を開けて、Rock Bandがさらにその流れを拡大し、売り場の構成そのものを変えてしまった。そしてこの2つの製品は、音楽ビジネスのプロモーションの流れを変えて、新たなプラットフォームとなりつつある。


 これらの製品の収録曲は新旧それぞれ取り混ぜられているが、収録されたおかげでいずれもラジオ等での露出も増えているし、相乗効果でセールスが伸びているそうだ。特に大きいのは昔の作品が勢いを取り戻すきっかけとなっていることだろう。さらに人気バンドとのタイアップや追加曲のダウンロード販売などの仕掛けで次々とビジネスの機会を広げている。
 Guitar Heroは、好調な追加曲ダウンロード販売のほかに、「Guitar Hero: Aerosmith」が今月リリースされ、「Guitar Hero: Metallica」も来年春に発売予定となっている。Rock Bandの方も、のダウンロード販売曲は、発売2ヶ月ほどで250万ダウンロードを記録している(ソース:ロイター)。さらにダウンロード販売の曲は次々と追加されていて(ウィキペディアのリスト)、なかにはモトリークルーのように新作シングルをRock Bandのダウンロード販売で先行リリースするような動きも出ている。
 また、iTunes Storeでは、これらの製品の専用コーナーを作って販促につなげているし、マクドナルドやウォルマートなども、商品のおまけでダウンロード販売曲を提供するなどのキャンペーンを実施している。これまではトリビュートアルバムなど音楽産業の中だけで完結する形だったのが、ゲーム産業で起きたイノベーションによって、新たな商機が生まれてきた。
 これは日本の音楽産業にとってもものすごいチャンスになる。わかりやすい例ではアニメソング、それに昔のジャパメタ(ラウドネスとか)など、海外で露出のあるニッチなコンテンツは、多少マイナーな曲でも対応曲を出せばちょっとした収益につながる。少し海外の市場に目を向ければ、寝かしてあるだけの古いコンテンツでかなりのビジネスができるし、国内市場でこれらの製品が普及すればもっと大きなチャンスになる。カラオケで一巡した需要をさらに掘り起こす良いきっかけとなるだろう。内向きのできない理由はたくさんあると思うが、一度乗り越えてしまうとビジネスチャンスとしてはかなり大きいと思うので、そのビジネスに近いところにいる人たちは(もうだいぶ遅いが)少し先手を打って動いた方が良いと思うのだが、どうだろうか。