フランス流国際会議運営

 Serious Games Summit Europeに参加するために、フランスのリヨンにやってきた。概要的なことはシリアスゲームジャパンにのちほど書くとして、ここでは個人的な雑感を。
 今回は主催者が用意してくれたカンファレンス会場の隣のホテルに滞在した。リヨンの国際会議施設エリアで、前方はローヌ川が流れ、後方には公園があって、緑豊かでとても眺めの良くて気持ち良いところにある。
 このカンファレンスでは、ヨーロッパのシリアスゲーム分野で話題になっている開発者や研究者と会うことができて実りの多い機会になってよかったのはさておき、何よりインパクトがあったのは、フランス流のカンファレンス運営だった。開始時間は朝9時なのに時間を過ぎても一向に始まる気配を見せず、主催者あいさつを大幅に圧縮して調整しつつ、20分遅れで開始された。でもそれはまだましなもので、ランチと午後のセッションの調整の仕方はもっとすごかった。一般参加者には立食形式でカジュアルなランチを提供されていて、そこではワインがソフトドリンクのように出されていて、みんな当然のようにワインを飲んで談笑している。食べ物も今までに参加したどんなカンファレンスのランチよりも豪華で、まるで夜のレセプションを昼間っからやっているようなノリだった。
 さらにスピーカーや関係者にはVIPランチと称して、隣のヒルトンホテルのレセプションルームで着席式のコースランチが振舞われた。いかにもホテルの団体客用フレンチっぽいものが出てきて、こちらでもワインがテーブルに並び、フランス人はみんな普通に飲んでいた。これも日米の普通のカンファレンスでは考えられない。
 VIPランチは移動などで開始が遅れ、さらに料理の出るペースもコース料理なので遅くなり、セッション開始時間を超えても、みんな気にすることなく食事を楽しんでいた。結局、二つあるうちの一つのセッション会場は40分遅れで開始となり、一つ目を飛ばして二つ目の発表から始まった。まるまる一つの発表がすっ飛ばされて消えてしまい、主催者は悪びれる様子もなく普通に午後のセッションが続けられた。
 日本でこんなことになれば大事だし、そもそもこんなことにならないように主催者は気をもみながら会議運営をするものだが、ここでは他国からの参加者もフランス流だからしょうがないといった様子で笑って受け入れているし、フランス人もこういうものだとばかりにたいして恐縮もせずにやっている。フランス人の人生の優先順位は仕事ではなく、食にあるということを見せつけられ、格の違いというかなんというか、ギャフンと言わされた思いがした。少なくとも、僕とウィ先生のセッションはランチ前だったので被害にあわずにすんでほんとによかった。
 ラテンな人々の国はこんな感じだから仕事の生産性が上がらないのだよ、などとちょっと思いつつも、それでも実は彼らの人生の方が豊かかもなぁともちょっと思いつつ、生き方の価値観の違いとはこういうものかと考えさせられる経験だった。