「セカンドライフ」世界を理解するための本

 最近日本でも話題になっているオンライン社会生活シミュレーションセカンドライフの公式ガイドブック「Second Life: The Official Guide」はアマゾンの洋書ランキングで36位まであがっていた。テレビでも紹介されたりし、ゲーム系以外の講演イベントで開発者が呼ばれたりして、関心が高まっているとは聞いたが、たしかにすでに人気の「洋ゲー」といったレベルを超えて、一般に普及している様子がこの辺りにも現れてきている。
 このガイドブック、「地球の歩き方」のような旅行ガイド風で、セカンドライフの世界を旅してみるにはちょうどよい。英語だけど読み易いので、セカンドライフの日本語版が出る前にヘッドスタートを切りたい人や、すでに始めているけど今ひとつ入り込めないという人にはちょうどガイドになる。私もセカンドライフは土地を持たずにたまにイベントを見に行ったり、名所散策するだけの超カジュアルユーザーなので、知らない情報がたくさん載っていて重宝している。
 このガイドはセカンドライフ自体を理解するのにとてもよい本だが、セカンドライフに興味のある人にはその世界の背景を知るための文献として「スノウ・クラッシュ(ニール スティーヴンスン 著、早川書房)」をおすすめしたい。バーチャル世界「メタヴァース」と現実世界を行き来しながら展開するSF小説で、1992年に出版されてベストセラーとなった。セカンドライフの開発者たちはこの小説に大いにインスパイアされて、かなりの部分をこの小説で描かれている「メタヴァース」をモデルとしているので、その意味ではセカンドライフの元になった作品とも言える。SF小説が未来世界のイメージを人々に伝えるという役割を果たしているが、この作品もそういうところを大いに兼ね備えている。
 バーチャル世界のイメージを映画「マトリックス」のような感じで捉えている人には、さらに豊かなイメージを持つことができるだろう。マトリックスはかなり影響を受けていると思うし、日本刀を振り回す主人公の描き方は、タランティーノが「キルビル」でやっているところに通じる。
 セカンドライフの周辺にいる人たちが「メタヴァース」と言っているのを聞いて、あぁなるほど、と反応している時は、この小説に描かれた世界を共有している。なので、少しセカンドライフにはまってみようと思っている人は、こちらも合わせて読んでみてください。